*先従隗始*
 (まずかいよりはじめよ)





1 燕の国の昭王は、強国・斉に戦
  で父を殺され、復讐したいと願っ
  ていました。


2 しかし燕は小国なので、賢者を
  招いて国力をつけたいと考えま
  した。
  そこで側にいた郭隗という家来
  に、どうすればいいのか聞いて
  みました。
  すると郭隗は、全く関係ない馬
  の話を始めました。

  「昔、千里を走る名馬を手に入
  れたいと思った王様がいまし
  た。召使に千金を与えて買いに
  行かせましたが、召使は死んだ
  馬の骨を五百金で買って帰って
  きてしまいました。
  王様は当然怒ります。すると召
  使が言いました。
  『死んだ馬の骨でさえ五百金で
  買ったのです、人々は生きた馬
  ならもっと高く売れると思うに違
  いありません。
  名馬は、きっと向こうから勝手に
  やってくるでしょう』
  はたして一年もたたないうちに、
  千里の馬が三頭もやってきまし
  た。」

  
3 「今もし、昭王が賢者をお求めな 
  らば、この隗を重用することから
  始めてください。
  そうすれば隗よりも優秀な賢者
  は、あの隗でさえ優遇されるなら
  自分はもっと良い待遇で用いら
  れるに違いないと思って、向こう
  からやってくるでしょう」


4 そこで昭王は隗を先生と呼んで
  尊重し、隗のために宮殿を建て
  ました。
  すると隗の言ったとおり、各国か
  ら賢者たちが先を争って燕の国
  にやってきました。
  めでたしめでたし。