なんと張良は、約束を破って項羽を追撃しようと言い出したのです。
もしもこのまま戦を止めれば、やがて力を盛り返す項羽に二度と勝つことはできないと、張良は考えたからです。

蕭: カッコいい!!この判断の的確さ、大胆さ、そしてタイミング。どれを取っても古今に類を
   見ません。心から尊敬申し上げます、張良どの。

張: しかし賭けですよね。確実に勝てる保障はどこにもなく、この絵の通り「勝てるとしたら
   今しかない」というだけのことだったんです。そしてあの項羽を裏切るんですから、これで
   負けたら殺されるしかない。 
蕭: 勝負に出た、ということですね。
張: まあ若かったんでしょうね。
蕭: ええ―――!?

張良の戦略通り、斉王になっていた韓信らを味方につけた劉邦は、勢いを得て項羽を垓下(がいか)に追いつめました。

蕭: ついに漢軍が垓下の城を取り囲みました。
張: 前・後編と続いたこの紙芝居もそろそろクライマックスを迎えそうですね。
蕭: ここからは高校の教科書にも必ずと言っていいほど載っている、「四面楚歌」のエピソードです。
   項羽は漢王の敵ですが、彼の運命を思うとちょっと悲しい気分になります・・・

張: 私としては項羽に個人的な恨みもあるのでそうも言っていられないのですが。
   しかしここまで来たからには、この軍神の最期を静かに見守るとしましょう。

項羽は四方を劉邦率いる漢軍に囲まれ、兵は少なく食糧も尽きていました。
ある夜、項羽が帳(とばり)の中で目を覚ますと、漢軍の中から、自分の故郷である楚の国の歌が聞こえてきます。これは項羽がそれまで共に戦ってきた味方の楚兵が、数多く敵軍に降っていることを意味していました。
「故郷の楚は、すでに漢軍の手に落ちたのか。敵の中に、何と楚兵の多いことだ」
こう言って項羽は絶望します。
今、項羽に実際に援軍は無く、またこの歌を聞いて心理的にも追いつめられた項羽は、まさに孤立無援の状態でした。